わたしは愛という名の麻薬中毒者だった。

常日頃から映画を観たあとはその時感じたこと思ったことを忘れないうちに書き出すことにしている。書き出して整理をして「ああ、1500円の価値があったな」とか「これは映画館で観なくてもよかったな」とかをだらだらと考える。それがたのしい。それが映画の醍醐味だ、と自負している。

だけど今日はなぜかそんな気になれなかった。本屋をふらりと歩き回ってスタバでキャラメルマキアートをちみちみと飲んで。飲みながら自堕落な自分の偏愛歴について考えた。それでいてふと気づいた。書き出す気になれなかったのはあまりにもテルコと自分が重なる部分があったからだということに。いい意味で、観るのに疲れたということに。

偏っていた歴を平らに戻してあげたい。どれくらい長くなるか今の時点では何とも言えないので帰省中のサービスエリアでも駅でも空港でもなんでもどこでもいいから暇なら読んでみてね。何かが変わるかもしれない。変わらないかも知らないけど。でも、あくまでもこの文は自分の供養の為、です。

 

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「愛」について考えたことはあるか。寵愛、情愛、愛執。数えきれないくらいの愛の形が世の中にはある。「愛」に何かが付属されて愛を取り巻くひとつの事柄になる。それは知っている。じゃあ結局「愛」ってなんだ。それはわたしには分からなかった。悔しいかな分からなかった。そして18の春に偶然テルコに出会った。

「好意」が「執着」に変わったら最後。わたしとテルコに共通していたのは「好意」の粒が「執着」にまで成長してしまった、ということだ。今でこそ冷静に判断できるがその時は目の前のことしか見えていなかった。テルコが彼に呼び出されたらすぐ家へ行ったようにわたしだって彼に呼び出されたらわざわざ駅まで迎えに行ったし。テルコが彼の為に仕事を休んだようにわたしだって彼の為に部活を休んだこともあったし。自分だけが自惚れて良いように使われるのは側から見たらすごく可哀想な女だったんだろうけどそれでも自分の中ではしあわせな女だったんだからその時はそれでよかった。今のわたしからすればつくづく歪んでいるなと呆れる。

「全てを寛容に受け入れているから向こうが駄目になるんだ」と言われても「貴方には関係ないでしょ」となるだけ。きっとハンマーでガツンと殴られても多分気がつかない。気がつかない、か死ぬだけ。のび太の方がよっぽど良い子だ。

テルコがどうしてマモルに惹かれてどうしてその手を離すことができないのか。単純だ。「執着」しているから。じゃあどうしてわたしが離れられなかったのか。単純もなにもいまさら。「執着」していたからに決まっている。でも、どうしてそこまでして?と聞かれてもきっとそれは「好きになるのに理由なんていらないでしょ?」と同じ理屈。理由なんて無いんだろう。気がついたら離せなくなっていたというだけのはなし。ではそこに「愛」はあるのか。果たしてテルコはマモルに対して「愛」という情を持っていたのか。わたしがテルコと対談をして「本当にマモちゃんのことが好きなの?」と聞けばテルコは迷わず首を縦に振ると思う。冷静に考えられる今のわたしならテルコに対してそれはただの中毒に過ぎないよ、と諭すことができる筈だけれど。

そういえばいつの日か恋の作用は麻薬の作用に似ていると聞いたことがある。本当はわたしが彼(麻薬)を必要としているのに彼がわたしを必要としてくれているという幻想(副作用)を抱いているに過ぎないということだ。きっとテルコは当たり前になっている日常がマモルという名の麻薬を失うことで変わってしまうという恐怖を抱いているだけなのだと思う。きっと、ずっと、わたしも同じだった。

 

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いろんな事を教えてもらった気がする。君が好きだ、なんてドラマみたく始まる恋なんて高校生までだよって。言葉無しに始まることが普通になってくんだよって。今日ウチ誰もいないんだよね、なんて漫画みたいな台詞に憧れを抱くのもやめなよって。大人になったらお互いの同意で充分なんだよって。もっとみんな情けないんだよ。もっとみんなかっこ悪いんだよ、って。どうやら「愛」も「恋」もそんなもんらしい。わたしは幻想を抱きすぎていた。

ここまで「スタバの飲み物代には席料も含まれているらしい」という言葉を鵜呑みにして永遠と席を占領し書き続けてきたけれど。結局わたしには「愛」がなにか分からなかった。それだけでなく「恋」もなにか分からなくありつつある。困った。このままではなにも分からなくなってしまう。だからもう考えるのはやめにしよう。今日の夜ご飯はなににしようかな。そういえば冷蔵庫の中にたくさん卵が残っていたっけ。明日は帰省するからそれをどうにかしないといけないし電車は立ちっぱなしを覚悟しないといけない。そのためにはたくさん寝て体も休める必要があるな。だけど今日は怖い夢を見たんだっけ、寝られるかな。あとしやがれも観て二宮くんを補給しないと。うー、惚れた弱みだ。

 

惚れたら負け、とはきっとこういう事なんだろうか。

 

 

2019.4.27